エシカルコラムでは、長野県内外でエシカル消費の普及等に取り組む方々をご紹介し、エシカル消費への思いや最新情報を発信します。
今回は、長野県からの委託を受けた長野県立大学の学生が、下伊那郡阿智村でドライフルーツなどの製造・販売を通じて、一次産業支援とエシカルな循環型ものづくりに取り組んでいる南信州菓子工房株式会社さんにお話しを伺いました。
〇南信州菓子工房株式会社ならではの特徴を教えてください。
南信州菓子工房は、国産果実のドライフルーツ等を製造・販売する菓子メーカーです。
独自製法で果物の風味を残し、規格外果実の買い取りや残液シロップのアップサイクル(廃棄されるはずだったものに新たに価値を加え、別のものに生まれ変わらせること)、自社農業参入、排水のバイオマス発電など、一次産業支援とエシカルな循環型ものづくりを実践しています。

〇これまでの活動を教えてください。
創業時より、生食やジュース用には向かない規格外の国産果実を農家から買い取り、独自製法でドライフルーツに加工することで、廃棄される果実の有効活用に取り組んできました。その後、ドライフルーツの製造過程で果汁入りシロップが廃棄されていることに課題を感じ、これらも無駄なく活用できないかと考え、寒天ゼリーやグミ原料へのアップサイクルを開始しました。さらに、干し芋の製造過程で生じる端材についても、ペースト化して成型干し芋として商品化するなど、原料を可能な限り使い切る取り組みへと活動を広げてきました。
こうした経験を通じ、廃棄物を減らすだけでなく、資源を循環させ、新たな価値を生み出すものづくりを進めています。
〇特に注力していることはありますか?
規格外原料の完全活用と、一次産業の持続可能性を高める自社農業の推進に注力しています。
ドライフルーツ製造で出る果汁入りシロップを廃棄せず、寒天ゼリーや他社と共同開発したグミの原料へアップサイクルするほか、干し芋製造で生じる端材をペースト化してスティック状の成型干し芋に加工するなど、残渣(ざんさ)ゼロを徹底しています。
また、温暖化や生産者高齢化に伴う原料供給危機に対応し、長野県阿南町の高標高地でのリンゴ高密植栽培や、大分県での大規模レモン栽培、鹿児島県での耕作放棄地再生による有機サツマイモ栽培を展開しています。自社が農業の担い手となり、環境配慮と安定調達を両立するモデル構築を進めています。
〇活動を通して伝えたいことを教えてください。
エシカルなものづくりを継続・発展させるには、企業が経済的価値(利益)を創出しながら、消費者が日常の買い物の中でそれらを選択する「相乗効果」が不可欠であると考えています。単なる善意やコスト増への対応ではなく、美味しさや品質を徹底追求した上で、規格外原料の活用や資源循環、生産者支援といった背景を正しく発信することが重要です。
消費者が商品のストーリーや環境・社会への配慮に少し目を向け、日々の暮らしでエシカルな選択肢を選んでくれることが、一次産業を守り、企業の持続可能な挑戦を後押しする力になります。作り手と買い手が互いに支え合う循環の輪を社会全体へ広げていきたいと考えています。
〇今後の展望があれば教えてください。
自社栽培の推進と一次産業の6次産業化を加速させ、持続可能な農業と製造業の共生モデルの確立を目指しています。阿南町の高密植リンゴや大分でのレモン、鹿児島の有機サツマイモの収量を段階的に拡大し、気候変動下でも安定した原料調達基盤を構築していきます。
さらに、果実の完全活用やアップサイクル商品の開発を深め、グループ全体での成長を目指すとともに、地域雇用の創出や耕作放棄地の再生を通じ、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
〇エシカル消費とはどのようなものだと思いますか?
商品の価格や美味しさだけでなく、その背景にある「人・社会・環境」への配慮に少し目を向け、日々の暮らしの中で主体的に選ぶことだと考えています。
特別な我慢や善意による行動ではなく、規格外果実の活用や資源循環、生産者支援といったストーリーに共感し、生活の一部として自然に選択されることが重要であると考えます。買い手のその一歩が作り手の挑戦を支え、持続可能な社会を共に築く原動力になると捉えています。
〇南信州菓子工房株式会社が考える長野県らしいエシカル消費とは何ですか?
豊かな自然や果樹大国という地域資源を守り、一次産業の未来を県民全体で支える消費行動だと考えています。
長野県は寒暖差や標高を生かした高品質な果実の産地である一方、生産者の高齢化や温暖化による適地変化などの課題に直面しています。規格外品を活かした加工品や地域内循環型の商品を消費者が愛着を持って選ぶことで、農地の保全や農業の次世代継承につながります。風土の恵みに感謝し、作り手を買い手が支える関係こそ信州の姿だと考えています。
〇エシカル消費を知っている人にこれからどんなことを求めたいですか?
まずは企業の取り組みや背景にあるストーリーを周囲へ発信・共有し、身近な買い物の中で「エシカルな商品を意識して選ぶこと」を実践してほしいと考えます。
いくら企業が環境配慮や生産者支援に取り組んでも、消費者に選ばれ、経済的な利益を生み出せなければ、その活動を継続することはできません。エシカルの意義を理解している方々が自ら率先して購入し、その価値を共感の輪として広げていただくことが、挑戦する企業にとって最大の支援となります。
日々の何気ない選択を少し見直すことが、持続可能なものづくりと一次産業の未来を後押しする確かな力になります。

執筆 長野県立大学グローバルマネジメント学部3年 柿畑 健太さん
| お名前 | 南信州菓子工房株式会社さん |
|---|---|
| 活動歴 | 14年 |
| 活動概要 | 〒395-0301 長野県下伊那郡阿智村春日3291-1 TEL:0265-43-5211 URL:https://www.373shinshu.com/ |