エシカルコラムでは、長野県内外でエシカル消費の普及等に取り組む方々をご紹介し、エシカル消費への思いや最新情報を発信します。
今回は、長野県からの委託を受けた長野県立大学の学生が、下伊那郡阿智村で地域の自然資源を無駄なく生かした手仕事を通じ、長く使い続けるためのモノづくりに取り組んでいる工房菜やさんにお話しを伺いました。
〇工房菜やならではの特徴を教えてください。
工房菜やは、身近な里山の木々を活かして日々の生活道具や家具を作る木工房です。地域の自然資源を無駄なく活かした手仕事を通じ、一つのものに愛着を持って長く使い続ける大切さや、道具を通じて使う人と里山の風景を結びつけるエシカルな暮らしの提案を行っています。
〇これまでの活動を教えてください。
地元の木を使い始めたきっかけは、「当時、お金がなかったから」というシンプルな理由でした。木工の訓練校では、地元の木は使い物にならず、海外の木でなければ良いものは作れないと教えられていました。しかし、「周りにこれほど木があるのに、なぜ使えないのか」と疑問を持ち、地元の材木店を回るなどして、地域の木を使ったものづくりを始めました。
地域の木を使うことは、身近にある森林資源に価値を見いだし、それを暮らしの中で活かすことでもあります。さらに、その木から作られた道具を使うことで、木が育った場所や里山の風景に思いを巡らせるきっかけにもなります。このように地域の資源を活かし、人と里山をつなぐことが、工房菜やのエシカルなものづくりにつながっています。
〇特に注力していることはありますか?
約10年間にわたり取り組んできた「木製離乳食スプーン作り」です。このスプーンは飯田市の6か月診断で赤ちゃんに贈られています。 自分の使うスプーンの木が育った場所を知ることで、その道具と実際の里山の風景がひとつにつながります。
直接その土地に住んでいなくても、「あの風景が好きだ」と感じて地域の製品を買ったり、応援したりする人が増えてほしいと考えています。スプーンや木べら、椅子といった暮らしの道具が、人と里山を直接結びつけ、関係人口を生み出すきっかけになるようなものづくりを、私たちは大切にしています。

〇活動を通して伝えたいことを教えてください。
身近な里山の豊かさに目を向け、その本来の価値を次の世代へ残していくことです。かつての里山では、土地にある木や竹などの素材で生活道具や衣類を作り、食料も山や畑から得て暮らしていました。これこそが本来の「里山の暮らし」ですが、何百年も人々を支えてきた森がわずか数十年の間に失われようとしています。
工房菜やでは、身近にある木を「豊かな資源」として暮らしの道具へと生まれ変わらせることで、使う人に木の温もりを届け、里山の豊かさや価値を未来へしっかりと引き継いでいきたいと考えています。
〇今後の展望があれば教えてください。
これまで培ってきたノウハウを次の世代へ引き継ぎたいと考えています。もともとは自分たちの代で工房を閉じることも考えていましたが、近年、仕事が評価されるようになり、現在は事業承継サイトで後継者を募っています。
問い合わせの中には設備や材木の購入を目的としたものもありましたが、単に物を譲るのではなく、長年の活動で培ったノウハウをしっかり受け継いでくれる人を望んでいます。
〇エシカル消費とはどのようなものだと思いますか?
エシカルとは「一つのものを長く使い続けること」だと考えています。100円ショップなどで安く買ったものは簡単に買い替えられるため扱いもそれなりになりがちですが、少し高価でも気に入って購入したものは大切に扱い、修理しながら使い続けようと思えます。
「物を長く使えるのが一番エシカル」であり、使い捨てるのではなく、愛着を持って長く使い続けることこそがエシカルな消費です。
〇工房采やが考える長野県らしいエシカル消費とは何ですか?
長野県らしいエシカル消費とは、「身近にある自然の恵みを暮らしの中で活かすこと」だと感じます。かつての里山では、土地にあるものを使いながら生活が営まれており、そうした「里山の暮らし」そのものがエシカルでした。豊かな森林が身近にある長野県だからこそ、地域にある資源に目を向け、それを暮らしの中で大切に使っていくことが長野県らしいエシカル消費につながると考えています。
〇エシカル消費を知っている人にこれからどんなことを求めたいですか?
「自分にとって何が正解なのかを考えること」が大切です。安いものを選ぶのも一つの選択肢であり、すべて高価なものを買う必要はありません。その中で自分の心がほっと温かくなるものを考え、納得して選ぶことが重要です。
消費をするときに「何を大切にしたいのか」を考え、決まった正解を求めるのではなく、自分に無理のない選択を考えることも、私たちがエシカルの軸として考える「思いやり」の一つだと感じています。

執筆 長野県立大学グローバルマネジメント学部3年 坂本 直樹さん
| お名前 | 工房菜やさん |
|---|---|
| 活動歴 | 35年 |
| 活動概要 | 〒395-0304 長野県下伊那郡阿智村智里3377 TEL:0265-44-2412 URL:https://k-nanaya.com/ |